今回はシンプルに、油絵に必要な画材をまとめていきます。
特に重要なものから解説していきますのでご覧ください。
本当に最低限必要なもの
油絵具
油絵具で描かれた絵のことを油絵と呼びますので、まず油絵具は絶対に必要となります。
顔料と油を練り合わせたもので、これさえあれば画溶液などを使わなくても油絵が描けます。
油絵具の主な特徴は
- 重ね塗りができる
- バターほどの硬さがある
- 乾くのが遅い
- ツヤと透明感を出せる
- 厚く塗ることができる
などなどです。
これらの特徴を活かして、さまざまな表現ができるんですね。
習作・大作用の量が多く安価なものから高級なものまであります。
一般的に、高級なものほど含まれる顔料の割合が多く、強く鮮やかな色が出ます。
他にも速乾油絵具や、水で溶かして使える油絵具などもあります。
支持体
支持体というのは
広い意味で、布(キャンバス)、板(パネル)、紙などの、絵具を定着させる土台のことですが
さすがに布や板にそのままでは描けないので、膠や下地剤を塗ってからその上に油絵具で描く形になります。
油絵具は乾燥すると硬くなり、土台が柔らかいとグニャグニャしてヒビが入ってしまいますので
しっかりとした土台に描く必要があるんですね。
油絵を画用紙に描くのはあまり良くないですが、和紙を膠で板に張り付けて描くのはやったことがあります。
あと、立体的な木材や樹脂に描いたこともあります。
円形の木材と樹脂に塗った油絵具
油絵具と支持体。
この2つさえあれば油絵を描けます。筆がなくても大丈夫です。
指だけで描いているプロもいます。
主に使われるもの
油絵具と支持体(あと指など)さえあれば、油絵を描くことができるとはいえ
いろんな画材を使うことによって、できることの幅は広がります。
筆
画材の中でも筆は特に使うことが多いので、簡単に紹介していきます。
豚毛筆
いろいろある筆の中でも油絵を象徴するような筆です。
いちばんの特徴は、毛が硬いことです。
バター並みの硬さの油絵具でも余裕で描けるくらいの力があり
丸型、平型など、いくつかの種類があります。
軟毛筆
動物の毛や人工繊維などを使って作られる柔らかい筆です。
硬い油絵具をそのままつけて描くだけの力はありませんが
画溶液で絵具を溶いてサラサラの状態にすることによって、豚毛よりも細かい描写ができます。
細筆
軟毛の中でも細いもの。
線描や、非常に細かい描写などに使われます。
ファン筆
扇状の筆です。
硬いタイプのものは、草木などを描くのに使えます。
柔らかいタイプのものは、塗った絵具をふわっと混ぜてグラデーションを作ることができます。
刷毛
大作を描くときや、下絵を大まかに描くときなどに使う幅の広い筆です。
世の中には、刷毛だけで描き初めから細密描写まですべて描くという人もいるみたいです。
パレット類
絵具をチューブから出しておいたり、混ぜて色を作るための道具ですが
使う絵具や色使いなども含めて、画家のパレットと呼ぶこともあります。
その画家を象徴する道具です。
パレット
木製のものや紙製のものなど、用途に合わせて色々なタイプのものがあります。
描く絵のスタイルによって選んだり、使い分けたりすると良いです。
小皿(油壺)
ペインティングオイルを入れたり、テレピンなどの溶剤を入れたりするための陶器やガラス製の小皿です。
オイルを入れる専用の金属製のものもありますが
意外と100均で買ったガラスの小皿なども充分使えたりします。
ナイフ
油絵では、とても使うことの多い道具です。
主に2つの種類があります。
パレットナイフ
パレットの上で絵具を混ぜたりするのに使います。
ペインティングナイフ
絵具を乗せて、絵を描くために使うナイフです。
形状によってさまざまなテクスチャーを作れます。
画溶液
主に、油絵具を溶くための液体で、メディウムとも呼ばれたりします。
絵具だけでも描けるのですが、少しサラサラにして描きたいときや、絵具の質感を変えたいとき
もっと乾燥を速めたいときなどに、目的に合った画溶液を混ぜて使います。
油(オイル)
「油絵」という名前からしてオイルをたくさん使いそうですが、意外にも単体で使うことは少ないです。
どちらかというと、オイルをベースに、溶剤、樹脂、乾燥剤などを調合して描くことが多いです。
植物から採った油を精製して作られ、その植物の種類によって特性が異なります。
揮発油(溶剤)
いわゆる「うすめ液(シンナー)」で、油を分解する液体です。
石油系の強い匂いがするんですが、苦手な人もいるでしょう。(私は好きです)
絵具を油ごと解かして超サラサラ状態にします。
単体で使うと乾くのは速いんですが、色がくすんで固着力も下がりますので、下絵を描くのによく使われます。
また油を解かす性質があるため、筆を洗うのにも使えます。
ニス
樹脂を溶剤で溶かしたものです。
溶剤が気化することよって固化し、絵具をコーティングします。
主に次のような種類があります。
描画用ニス
描画用ニスが入ったメディウム
実際に絵具を溶いて、絵を描くために使われるニスです。
主にパンドルと呼ばれていたりもしますが、あまり単体では使用しないです。
オイルや溶剤などと混ぜてツヤを出したり、乾燥を速めたりします。
画面修正用ニス
「ルツーセ」「レタッチャー」などと呼ばれるものです。
乾燥した油絵具は、表面がツルツルしていて上に塗る絵具を弾いてしまうのですが
ルツーセを塗ると接着剤のようになって、上から絵具を乗せることができます。
私は、この使い方をすることが最も多いのですが
ツヤのある部分とない部分の差をなくすために全体に均一に塗るというのが、よくある使い方だそうです。
つまり、絵を描きやすいように画面を修正するためのニスです。
画面保護用ニス
描き終わった絵の表面に塗って、画面をコーティングします。
完全乾燥後(完成から半年ほど)に塗るニスの他に、描き終わってすぐ一時的に塗るものがあります。
ちなみに「ニス」とは、Varnish(ヴァーニッシュ)の略らしいです。
乾燥剤
「シッカチーフ」と呼ばれるもので、絵具に少量混ぜて乾燥を速めます。
表面から速く乾燥させるブラウン系と、中からゆっくり乾燥させるホワイト系があります。
ペインティングオイル
上記のオイル、樹脂、溶剤、乾燥剤などをバランスよく調合して作られた画溶液です。
これ一本あれば、描き初めから完成まですべての場面で使えます。
画家が自分で作ったりもしますが、各メーカーが作った既製品が売っていますので、初心者の方にはオススメです。
速乾メディウム
樹脂を使って作られたメディウム。
乾燥が速いペインティングオイルだと考えればわかりやすいと思います。
オイル、溶剤、樹脂などがバランスよく配合されているので
実は、オイルを使わずとも速乾メディウムさえあれば、それだけで油絵を描けます。
※メディウムというのは顔料を定着させるための媒体のこと。オイルも、メディウム(媒体)のうちの1つです。
ビン入りの流動タイプのものと、チューブ入りの塑性タイプのものがあります。
クリーナー
油絵具や画溶液は、付着したり固まったりすると取れなくなりますので
描いたあとに掃除するためのものも紹介しておきます。
筆洗液
油絵具のついた筆を洗うための液体。
揮発油と同じような成分なので必需品ではないんですが
揮発油よりも筆にやさしく、絵具を落とすのに向いています。
剥離剤
筆やパレットに固まってしまった絵具を、溶かして剥がすためのものです。
こちらは溶かす力が強いぶん、危険性が高いので取り扱い注意です。
布/紙/服
絵の制作中に周囲を汚さないため、または汚してもいいようにするためのものです。
ウエス
いわゆる雑巾のようなもので、絵具や画溶液を拭くのに使います。
専用に買わなくても、古くなったタオルなどを切って再利用すればOKです。
ティッシュ
ウエスと同じような用途ですが、使い捨てられるので楽ではあります。
単に掃除するだけではなく、画面に塗った絵具をティッシュで拭き取って独特の質感を出したりもできます。
汚れてもいい服
服に油絵具が付くとほぼ落ちないので、汚れてもいい服で描くことをオススメします。
オーバーオールやエプロンなどを着て描くことも多いです。
(私は最近はもう普段着で描いてます)
周辺に置くもの
絵を描く効率を上げるために、置いておくと便利なものを紹介します。
イーゼル
キャンバスなどを立てかけて固定するためのものです。
簡易的なものから大掛かりなものまであります。
椅子
これは何でもいいんですが、座って描くときに椅子があるといいです。
筆立て
筆を立てておけるものがあると、取り出しやすくて便利です。
ペットボトルを半分に切ったものなどでもいいです。
台・テーブル
椅子に座って描く場合に、パレットなどを置くために使います。
ちょっとした台のようなもので良いですし、必要なければなくても大丈夫です。
あると便利もの
なくても大丈夫ですが、あれば便利というツールをいくつか紹介します。
地塗り剤
油絵を描く下地を作るためのものです。
油性、水性、半油性など、いろんなタイプがあるんですが、いずれにせよ通常の絵具とは異なる塗料で
いろんな素材の上から塗ることができて、乾燥が速く頑丈な土台を作ります。
ちなみに市販のキャンバスには、もともと地塗り材が塗ってあるのであえて塗る必要はないです。
下描きに使う画材
下描きをしなくても油絵を描くことはできますが
もし下描きをする場合にはこれらの道具を使うとよいです。
鉛筆&練りゴム
やはり下描きをするのにいちばん使いやすいのはこれです。
デッサンや鉛筆画ではないので、特にブランドにこだわるほどでもないと思います。
練りゴムは、形を変えることができて消しカスも出ないので、通常の消しゴムよりも絵を描くのに向いています。
定着液
「フィキサチーフ」とも呼ばれる鉛筆の線を定着させるためのものです。
これを使うと、ペインティングオイルなどで描いても鉛筆の線が消えません。
定規・コンパス類
直線や円などの形をとったり作図をすることができます。
長さの比を測るための専用の「デバイダー」というのもあります。
その他の小道具
本来、油絵制作の道具ではないのですが、便利に使えるものがあるので挙げておきます。
スポイト
溶剤や画溶液を入れておくものです。
ビンから出すよりも使いやすいので使う分だけ入れておくといいです。
これも100均で手に入ります。
手置き棒
自作のものですが、長さ1mほどの棒です。
これを画面に重ねて手を乗せると画面に触れることなく描けます。
綿棒
絵具を細かく拭き取るのに使えます。
先が尖っているものもあって便利です。
オイルパステル
いわゆる「クレパス」ですが
油絵具とほとんど構成物が変わらないので(ロウが入っているくらい)実は油絵として使えます。
筆で描くのとは、また違った感覚です。
まとめ
- 最低限、油絵具と支持体さえあればよい
- ペインティングオイルか速乾メディウムが1つあれば描ける
- 画材以外のものも工夫次第で油絵制作に使える
あまり複雑に考えず、まずは必要なものだけを使い
やりたいことが増えてきたら新しものを取り入れていくとよいと思います。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。