油絵で使われる油には、大きく分けて2種類あります。
「乾性油」と「揮発油」です。
乾性油は乾いて固まる油、揮発油は揮発して消える油です。
揮発油は油ではありますが、あまり「オイル」とは呼ばず
英語でシンナーとかソルベントとか言います。
油絵でオイルといえば、ほぼ「乾性油」のことを指します。
今回は揮発油はひとまず置いておいて
乾性油の種類や特徴について書きます。
乾性油とは
主に植物からとれるオイルで
ヨーロッパでは昔から油絵に用いられてきました。
顔料を画面に定着させるための
接着剤みたいなものだと思ってください。
乾く(酸化する)油であるというのが条件です。
ごま油やオリーブ油などは乾かないので
いつまでもベタベタしてしまって絵になりません。
乾性油は、数日かけてゆっくり乾き
いったん乾くと固まって溶けませんので
上から重ね塗りできるのが特長です。
主な乾性油の種類
リンシードオイル
亜麻仁(あまに)油。
食用でもよく見かけますね。
油絵のリンシードオイルは、描画のために
特別に精製されたものらしいです。食べられません。
ヨーロッパでは伝統的に油絵に使われてきたオイルです。
特徴
- 塗膜が強い(年月が経っても剥がれたり割れたりしづらい)
- 乾性油の中では乾燥が早い(約2.5日)
- 黄変しやすい(時間と共に黄色く染まる)特に白系や青系の絵具に混ぜると変色が目立ちやすくなります。
- 個人的には魚っぽい匂いがするなって思うんですよね。どうでしょう?
ポピーオイル
芥子(けし)油。
ケシですね。栽培すると捕まります😊
油は高級品で油絵に用いられ
高級絵具や白系や青系の絵具に初めから練り込まれていたりします。
特徴
- 色がほぼ透明で黄変しにくい(淡色や青系色にも使える)
- 乾燥が遅い(約5〜7日)
- 塗膜が多少弱い
- 値段が高め
サフラワーオイル
紅花(べにばな)油。
リンシードとポピーの中間くらいのスペックを持っています。
淡色で明るく安価なので
近年、欧米ではサフラワーオイルが主流になりつつあるとか。
特徴
- そこそこ塗膜が強い
- 黄変が少ない
- 乾燥はやや遅い(約5日くらい)
- わりと安価
ウォルナットオイル
胡桃(くるみ)油。
ルネサンス時代の画家が好んで使っていたといいますが
私は使ったことがないです。
聞くところによると、かなり性能は良いとのことですが
取り扱いが難しく一般的ではないようです。
特徴
- 乾性油の中では乾燥が早い(約2.5日)
- 黄変が少ない
- 塗膜が強い(リンシードほどではない)
- 描き味がよく細密描写に向いている
- 適切に保管しないと悪臭を放つ(密閉して冷蔵保存、日光に当てないなど、しっかり管理しておけばOK)
乾性油の使い方
画用液として
絵具に混ぜて、伸びをよくしたり
薄めて半透明に塗ったりします。
そのまま単体で使うか、または別の溶剤類と調合して使います。
絵具の媒剤として
顔料と乾性油を練り合わせたものが油絵具です。
オイルの種類はブランドによって様々です。
ふつうあまり気にしないですけど
私は絵具を選ぶときに、どのオイルが練り込まれているかを
けっこう確認しています。
画材のメンテナンスに
木製のパレットにオイルを塗り、拭きとって乾燥させる。
これを何度も繰り返すと表面がオイルでコーティングされ
絵具がパレットに染み込まなくなります。
見た目もピカピカで気分が良いです。
あと、筆をオイルで洗うという使い方もあります。
まとめ
- 乾性油(オイル)とは、酸化によって固まる油のことを指す
- 主に数種類の植物の種などから絞って精製される
- 油絵においては、顔料を固めて画面に定着させるのに使われる
それぞれのオイルの特性を簡単にまとめると
- 塗膜の強さ:リンシード>サフラワー=ウォルナット>ポピー
- 黄変の少なさ:ポピー>サフラワー=ウォルナット>リンシード
- 乾燥の早さ:リンシード=ウォルナット>サフラワー>ポピー
といったところでしょうか。
絵のスタイルや目的に合わせて選んでみてください。
それはともかく原料となる花がどれも綺麗ですね。
植物から作られているんだなと思うと、大事に使う気になります。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。