油絵の画溶液やメディウムに使われるものといえば
まずはオイル(乾性油)ですけど
必ずといっていいほど同時に使われるのが
樹脂と呼ばれるものです。
油絵で使われるメディウムには
いろんな種類の樹脂が調合されているので、よく目にしているはずですが
いったい樹脂って何なのか?
何の目的で使われているのか?
わからない人も多いんじゃないでしょうか。
そこで今回は
知っているようで意外と知らない、樹脂について解説していきます
樹脂とは
樹脂とは
粘着性のある可燃性有機物質で
水に溶けないという性質を持っています。
もとは樹液が固まったものなのですが
現代ではさまざまな種類のものが作られています。
大きく分けて「天然樹脂」と「合成樹脂」があります。
天然樹脂
植物の樹液が、揮発成分を失い固体になったものです。
樹木から採れたり、化石や動物からも採れたりします。
軟質樹脂
樹木から採れる樹脂。
テレピンなどの溶剤に溶かすことができます。
(ダンマル、マスチックなど)
硬質樹脂
太古の樹脂が固まってできた琥珀など。
描画に使うと、堅牢な画面を作れます。
(コーパルなど)
バルサム
特定の樹木が分泌する液体で
樹脂が揮発性油に溶けた状態のものです。
(ヴェネツィアテレピン、カナダバルサムなど)
人工樹脂
天然樹脂に似せて人工的に作られたもの。
現代では「樹脂」といえば、人工樹脂のことを指すのが一般的なようで
プラスチック・ゴム・接着剤などに利用されています。
変質が少なく
絵画制作でもこちらの方が主流になっています。
(アクリル、アルキドなど)
樹脂の乾燥について
オイル(乾性油)は酸化によって固まり
揮発油は揮発して空気中に分散するわけですが
樹脂は、固化します。
もともと固体だった樹脂を
テレピンなどの揮発油で溶かしたものがメディウム類として売られています。
メディウム内の揮発油が揮発することにより、樹脂はもとの固体に戻ります。
すると固まった樹脂が絵具をコーティングするような形になります。
油絵に樹脂を使う4つの主な目的
速乾させるため
乾性油に樹脂を混ぜて描くと、翌日か早ければ数時間以内に乾燥します。
これは、樹脂が固化することで絵具を囲うような形になるからです。
実際にオイル自体は乾いていないのですが、加筆できるようになります。
この性質を利用して、さまざまな樹脂が速乾メディウムに用いられています。
「速乾」「クイック」「ラピッド」などと
名前がついているメディウムには、速乾用の樹脂が混ざっています。
グレーズのため
グレーズという絵具を半透明に薄めて塗る技法がありますが
オイルや揮発油だけで薄めると、サラサラになりすぎて塗りづらくなってしまいます。
そのときに樹脂を一緒に混ぜると、樹脂の持つ粘着性によって
粘度を保ったまま絵具を半透明にすることができます。
サラサラの液体だと、広がりすぎて制御できないところを
ある程度、粘度を加えてコントロールしやすくします。
また、樹脂は透明度が高くツヤを与える働きがあり
乾燥も速くなるため、グレーズ技法には最適といえます。
市販のペインティングオイルやグレーズ用のメディウムには
バランスよく樹脂が調合されています。
画面保護のため
樹脂は乾性油よりも透明度が高く、乾燥すると画面に輝きを与えます。
そして固化することで絵具をコーティングする効果もあります。
そのため、仕上げのニスとして使用すると
描いた絵を保護するとともに輝きを与えます。
ニスとして「タブロー」や「マットバーニッシュ」といった
専用の製品が売られています。
絵具を付きやすくするため
最後にちょっとマニアックな用途ですが、ルツーセという樹脂メディウムの目的です。
油絵が制作から半年くらい経って完全に乾くと
表面がスベスベになってしまい、絵具が付きにくくなります。
そんなときにこのルツーセを塗ると、樹脂が接着剤のようになり
新たに絵具を塗り重ねられるようになります。
また、画面の中に
ツヤのある部分とない部分が入り混じって描きづらいときに
ルツーセを塗ると、全体が均一のツヤになり描きやすくなります。
補足
樹脂とオイルは乾燥のメカニズムが違うため
不均一に混ぜて使うと、シワが寄ったり亀裂が入ったりするおそれがあります。
オイルや絵具に樹脂を混ぜるときは、均一になるまでよく混ぜましょう。
そういったリスクを避けるために
樹脂をまったく使わず、オイルだけで描く人もいます。
私は非常に好きでよく使っています。
特にリクインなどの樹脂(速乾)メディウムを絵具に混ぜると
なぜか黄変しにくくなる効果があるので
速乾させたい時以外でも、黄変防止のためにちょっと入れています。
ただし、樹脂を使いすぎると
絵具がゴムっぽい質感になるのがちょっとイヤだったりするので
使う量には気をつけています。
まとめ
- 樹脂とは、固まった樹液やそれに似せて作られたもの
- 揮発成分が揮発することによって樹脂は固化する
- 油絵においては、速乾・グレーズ・画面保護・絵具接着の目的で使われる
それでは最後まで読んでいただき
ありがとうございました。