油絵具は乾燥するのが遅いため、乾くまで何日も待ったり完成までに時間がかかるのですが
実は、やりようによっては1日以内、数時間で描き上げることも可能です。
乾燥の速いアクリル絵具を併用する手もありますが
今日は油絵具のみを使い、数時間で完成まで持っていける描き方を考えていきたいと思います。
短時間で描くための考え方
まずは、短時間で絵を完成させるための基本的な考え方を挙げます。
完成図を決めておく
これは基本中の基本ですが
ゴール地点がわからないのに走り出しても辿り着けません。
ましてや短時間で完成まで到達するのは無理です。
描くまえにスケッチなりエスキースなりをして、ゴール=完成図を決めておきましょう。
描くものを限定する
街の風景をすべて1日で描こうとしても、さすがに無理ですよね。
こういうときには、たとえば建物などをシルエットだけ描いてベタ塗りしたり
背景にあるものをなるべく省略したりすれば、描くものが減って制作時間の短縮になります。
そもそも描きたくないものは、描かない(画面に入れない)のがおすすめです。
画面に入れる場合はメインだけを頑張って描いて
あとは省略したり大まかに描く程度にするのも良いです。
なるべく重ねずに一回で描く
一日で制作しようとすると、重ね塗りが難しくなります。
絵具が乾かない状態で、何度も描き込んだりグレーズをしたりすると
下の絵具と上の絵具が混ざってしまいマトモに描けないからです。
そこで、私がおすすめしているのは
塗り絵のように端から端まで、1回ですべて描いてしまうことです。
重ねて描こうとするから、乾燥を待つ必要が出てくるわけで
つまり、重ねなければいいのです。
何層も重ねようと一層だろうと、上から見れば結局、同じです。
それならば最初から最適な一筆を乗せましょう。
絵具を重ねるメリット
先ほどの段落で、なるべく重ねずに描くほうがよいと言いましたが
逆に、油絵の絵具を重ねて描くメリットは何なのでしょうか?
いくつか挙げてみます。
大まかに描いてから細部を描ける
これが一番わかりやすい重ね描きのメリットかと思いますが
全体を大まかに描いてから、その上に重ねて描く。
このやり方でどんどん細かく描いてゆくことが可能です。
とても理にかなっていますので、このやり方は活用したいところです。
深みや変化を出せる
絵具をいろんなタッチで重ねることで色に深みが出たり
表面に変化が出ますので、複雑で重厚な印象になります。
下の層を生かしてかすれさせたり、半混ぜ状態にしたり。
なるべく重ねるなとは言いつつ、やはり重ね描きには魅力があるんですよね。
ということで
ムダを最小限に減らしつつ絵具を重ねたときのメリットも出せる
ような描き方を考えてみたので説明していきます。
絵具をどう乗せてゆくか
さて、それでは
実際に短時間で絵具を重ねて描くにはどうすればいいでしょうか。
結論から言いますと
透明色→不透明色→厚塗りの順で描くのがベストです。
その理由を解説していきましょう。
厚く塗った上に薄くは重ねられない
たとえば、絵具をゴッホのように厚く塗って
それが乾燥する前に上から何かを描こうとしても、絵具同士が混ざってしまい大変です。
厚く塗れば塗るほど乾燥に時間がかかりますし、上から重ねて描くことはできません。
基本的に、薄塗りの上に厚塗りはできますが
厚塗りの上に薄塗りはできません。
そこでまずは、透明絵具の薄塗りから始めましょう。
透明絵具はもともと画溶液で薄めて使うものなので、自動的に薄くなります。
乾燥も速いですし、ムダな厚みも出ませんので、上から重ねて描きやすいのです。
徐々に使う絵具を厚くしてゆく
透明絵具である程度描いたら、次は不透明絵具で描きましょう。
半乾きの透明絵具の層の上から、透明絵具を重ねる(グレーズする)と
下の層が溶けて剥がれてしまいますが
不透明絵具を重ねれば、剥がれずに覆い隠せるからです。
その後も、描き進むにつれて、絵具をどんどん厚くしてゆけば
常に下に塗った絵具を覆い隠しながら描けます。
つまり
- はじめに透明色で描いて
- 半乾きになったら不透明色で描いて
- 最後に厚塗りで描く
こうすれば、絵具が剥がれず混ざらずに、効率的に描くことができるのです。
速くかけるうえに、重ね塗りのメリットも活かせます。
おすすめの描き方
では、これらを総合して、短時間で描くためのおすすめの方法を解説してきます。
手順1:透明色で下絵を描く
まずは、透明絵具を揮発油(+速乾メディウム)で薄めて下絵を描きます。
透明色は、元の色が暗く、薄めるほど明るくなる性質があるので
揮発油で薄めて濃度を変えながら、全体の大まかな明暗を描きます。
揮発油+速乾メディウム+透明絵具 で、薄く塗れば
1時間ほどで、表面が半乾きくらいにはなります。
まずは、透明色だけを使って
形をとったり明暗をつけるなど、下絵を描いておきましょう。
あくまでも、透明絵具で描くというのがポイントです。
もし不透明絵具で下絵を描いてしまうと、ミスしたときに修正しようとしても
色が混ざって濁ったり、下描きの線が消えてしまったり、拭き取りづらかったりして大変です。
その点、透明絵具は、簡単に溶かして拭き取ることもできて
描き直したりしやすいので、下絵を描くのに適しています。
よって、この段階で
正確に形をとり明暗をつけておきましょう。
手順2:不透明絵具で主要な部分を描写
透明絵具の層が、半乾きになったら
次は不透明絵具で主要な部分を描き込んでゆくのがよいです。
実は、表面が完全に乾いた状態よりも
半分乾いている状態のほうが絵具同士がくっつきやすいのをご存じでしょうか。
半乾きの表面というのは、ベタベタしていて粘着テープみたいになってます。
この上から不透明絵具で描くと、いい感じに噛み合ってとても描きやすいのです。
ということで、透明層が半乾きになった時点で描いてゆくのがベストです。
細かい描写は最後にやるのではなくここでやるのがポイントです。
厚塗りで細かい描写をするのは難しいので
この不透明色で描く段階で、細部まで描き込んでおくのが最適です。
できるだけ塗り絵のように一回で描いてしまうのがいいと思います。
手順3:厚塗りで他の部分を描いて完成
今まで透明色と不透明色で描いてきた以外の箇所、
あまり描き込まないところや背景などを厚塗りで描いて完成です。
特に、明るい部分やハイライトなどを厚塗りで描くとビシッと決まるのでおすすめです。
ひとつの絵の中に
- 透明色で描いた部分
- 不透明色で描いた部分
- 厚塗りで描いた部分
があると、絵の表情に変化ができますので、重厚感も出てくることでしょう。
まとめ
- 薄めた透明絵具で大まかな下絵を描く
- 不透明絵具で、細かく描写する部分を描く
- それ以外やハイライトなどを厚塗りで描く
それでは、最後まで読んでいただき
ありがとうございました。